最近、新型コロナウィルスの影響により、「集合研修の意味」「オンラインへの移行」ということについて言及される方の発言が目に入ることが多く、その時にいつも思い出すのは2014年の記憶なので、ここに書いておこうと思います。
2014年のATD(当時はASTD) のカンファレンスで、あるセッションに参加した時のこと。
「客先を訪問し、機械の整備を担当するフィールドスタッフの顧客満足度が低く、取り組みが必要だという話になりました。人材開発の担当者としてあなただったら何を提案しますか?」
というテーマで、グループに分かれてディスカッションし、その内容を共有し、最後にベストプラクティスをみんなで選ぶというセッションでした。
結論から先に書くと、選ばれたベストプラクティスに集合型研修は含まれていなかったのです。
私は当時、日々集合型研修のトレーナーとして活動しており、このディスカッションのスタート時には
「こういうのは研修するというと上司が反対するんだよなあ」
「そもそもスタッフの人数が足りてなくて従業員満足度も低いんじゃないのかなあ」
「マナーを教える方向に行きがちだけど、それよりも顧客の心理を理解するような施策が必要なんじゃないのかなあ」
などなど想像しながら、ディスカッションに加わっていましたが、そのディスカッションの中で軸になっていたのが、効果測定と費用対効果、そして効果の持続性でした。
各地から参加者を集めて、集合型で集中的に研修を行う施策に効果はもちろん存在する。
しかし、その効果は持続するのか。
それよりも、効果を上げる方法はないのか。
コストも安く実施できるものがあるのではないか。
実際に「自分はフィールドパーソンだったんだ」という方が熱く語っていたことも思い出されます。
ベストプラクティスとして選ばれたものは
まず顧客とスタッフ、上司のサーベイを実施 ⇒ その内容によってはスタッフ数の増加を検討
サービスのあるべき姿、理想の状態を言語化 その後で方法論にブレイクダウンする
インプットはポッドキャスト 毎日の往復で聞くことが出来る5分くらいのもの(映像が必要であれば、これもオンラインで見ることが出来る5分くらいのものを制作する)
各自の訪問対応を録画して相互にフィードバックしあう(オンライン上)
相互に訪問同行をする(これはオンラインではなく最寄りの方同士)
ウィークリーレポートの提出+シェア(デイリーの方がよいのかどうか検討が必要)
インストラクター(指導役)が職場訪問+同行 ⇒ いいスタッフは取材、よくない場合は指導やコーチング
取り組みの最後には再度サーベイの実施 効果測定 その後 表彰なども検討
といった内容だったように記憶しています。
その夜、一人になったホテルの部屋で
「ポッドキャスト!」
「ポッドキャスト作るとか、考えたこともないやんなあ」
と関西弁で自分に突っ込んでいました。(関西の方はぜひ「ポッドキャスト」を桂小枝さんのモノマネで...)
私自身にとっては、自分のパラダイムが集合型の研修ありきになっていることに気づかされる機会となり、自分の視野を広げ、トレーニングデリバリー(研修納品)以外への知見を吸収しなければ人材開発のプロフェッショナルとは言えないと痛感させられたセッションでした。
そんな経験から、「集合研修」と「オンラインでの研修実施」の比較で考察を重ねるよりも、その施策は意図した効果、結果を生み出すものなのかを考えていくことが重要だと個人的には思っています。
さて、もうひとつ個人的な思いを書いておきます。
今年参加したかったアメリカでのカンファレンスは3つありました。
2月のATD TECH
4月のAdobe Learning Conference
5月のATD ICE
2月は犬の看病で参加が出来ないかもと迷っているうちに、新型コロナウィルスの広がりが懸念される世界情勢で「これはアジア人の参加に抵抗感を感じる方が多いかも知れない」と参加を見送る判断をしました。4月はキャンセルになりました。5月はどうなるかわからない状況です。
ライブで研修に参加すると、コンテンツの吸収に加えて、様々な得られるものがあります。
内面に起きる変化は、現地で様々な人と触れ合うことによって得られるとも思っています。
(なので、私は集合型研修否定派ではありません。たまに誤解されるのです。そんなことは言ったことも思ったこともないのに…)
また参加できる日、たくさん吸収できるインプットの機会がいつか戻ってきますように。
最後に、罹患された方の回復を祈るとともに治療に従事する医療関係者の皆様への感謝を。
そして、今日、皆様が穏やかな一日を過ごせますように。
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